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The Diamond Dust

僕は蜃気楼を見ていた…

The Diamond Dust

by Unknowner

【特集】ロック・メタル向けヘッドホンの紹介

今回は,私の愛する音楽ジャンルである,ロック・メタルの再生に適したヘッドホンを紹介したいと思います。(画像はeイヤホン様,amazon様のホームページなどから転載しています。)

そもそも,ロックのルーツはR&Bやカントリーから強い影響を受けた50年代米・ロックンロールにあるとされており,通常ギター,ベース,ドラムの三楽器を中心に,典型的にはヴォーカルを加えた構成で演奏されることが多いですが,ロックジャンル自体が極端な多様性をはらむものであるがゆえ,その共通した音楽的特徴を定義づけることは極めて困難ですし,すべきではありません。

日本ではポップスとロックの音楽的境界がほぼ消滅しており,ポップス・ロックという一括りのジャンルとして語られることも非常に多いですし,実際問題純粋で典型的なロックバンドというもの自体あまり存在しないように思えます。例えば,ONE OK ROCK はロックというよりむしろエモですし(そもそもエモ自体ロックの1ジャンルですが。),Bump of chicken やBacknumber なんかはハッキリ言ってポップスです。

そこで,今回はベーシックなロックシーンにフォーカスを当て,具体的にはEagelsのHotel California やNirvanaNevermind,YesのRoundaboutなどといった歴史的名盤を聴くにはどのようなヘッドフォンが適しているかを考察していきたいと思います。

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また,メタルについては逆によりメタル色の強い過激なジャンル,例えばデスメタル系やスラッシュメタル系を想定することとします。

さて,それではロック・メタル向けのヘッドフォンを紹介していきたいと思います。

 

先鋒:SENNHEISER HD25

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ドイツの老舗メーカーゼンハイザーが誇る,歴史的DJモニター。シリーズ初号機の発売が25年前と歴史は古く,当時から現在に至るまで数多くのDJに愛されてきたモデルである。

特筆すべきはキレと量感を高水準で両立した低域。極限まで無駄な贅肉をそぎ落としたソリッドスタイル。高音圧の激しいドラムの音が,熱いロック魂を揺さぶる。まさに地を這うような疾走感溢れるドラムサウンドだ。これは素晴らしい。さすが漢のヘッドフォンと言われるだけのことはある。

また,通常低域が強めのヘッドフォンは中高域が曇ったように聴こえるイメージがあるが,HD25は違う。ドラムの迫力が半端でないのと同様,ギターやボーカルも引き立ち,音圧の不足も感じさせない。

音場は狭いものの前後感を感じる立体的なサウンドで,ボーカルは若干遠目に感じるものの粗い男性ボーカルなどとの相性が抜群。GRADOのヘッドフォンなどとは正反対に真面目で武骨なモニターサウンド。プレイボーイのような遊びを感じさせない。

先日のパッケージ変更により15000円強まで値下げされ,その価格に見合わぬ解像度に思わずひれ伏す。一方で分離感は悪く,音がダマになって聴こえるし,篭りもかなり感じる。が,そういった欠点がどうでもよくなるような,聴いていると元気になれるサウンド。

悪名高き装着感はYAXIのイヤーパッドで改善しよう。ガツガツした音が若干収まり,音がさらに立体的になり一石二鳥。

兄弟機HD25 Alminium,Amperior はノーマルモデルに比べ音に味付けが加わり,若干の遊びが生まれるので一聴の余地あり。(個人的にAlminiumの音はノーマルモデルに感じる分離感の悪さや篭り感を感じさせず,味付けの強い音がロック・メタルと相性が良いため,こちらもオススメです。)

 ロック・メタル好きは全員持っているべきマストアイテム。

 

次鋒:SENNHEISER IE60

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二連続でSENNHEISERというのもなんだが,音が素晴らしいので許して欲しい。

2万円弱で手に入るイヤホンの中では最もコスパに優れたイヤホンと言っても過言ではない。

量感は少ないもののキレの良い低音は不満を感じさせない。必要最低限の低音が中高域の見通しの良さを助けていると思えば悪くないだろう。IEMタイプのイヤホンにしては開放的な音作りで,ここ辺りは同社ヘッドフォンのHD650などにも通ずる面がある。

SENNHEISERにしてはシャキシャキした迫力重視のサウンドだが,包まれるような低音に癒されるのが不思議だ。SENNHEISERらしいと言えばらしいのだが,元気で楽しいのに同時に癒されるイヤホンはなかなかない。とにかく耳当たりへの配慮が感じられる。

ということで,プログレなどのクラシカル系,シンフォニック系のロックやメタルとの相性も良い。

少し大人で上品なロックミュージックが好みの人にお勧めしたいモデルである。

IE80でなくIE60としたのは低域のキレ,疾走感を重視した結果。

 

中堅:SHURE SE215 Special Edition

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SHUREドンシャリIEM,SE215 Special Edition。

某有名オーディオショップの年間売上ランキング上位の常連としても知られ,高級イヤホン入門者の登竜門的存在にもなっている。初音ミク色とも言われるスケルトンのブルーハウンジングに心が洗われるようだ。

一聴すると,暴力的な音圧で押し寄せてくるガツンとした低音に驚愕するだろう。HD25と異なりキレはあまりないが,諭吉1枚と少しで手に入るイヤホンでこれだけの低音の満足感を得られるイヤホンはないはずだ。

一方で中高域には不満を感じざるを得ない。妙にシャキシャキした音で透明感がなく,ギターの音の再現性もそこそこだ。

しかし,遮音性が極めて高く,ケーブル着脱式でお手頃価格というバランスを実現しているイヤホンはそうない。

イヤーチップの交換で,ボワボワした低域を引き締め,中高域寄りにシフトさせると良い。遮音性重視ならComply Ts-100,透明感と抜けの良さ重視ならSpinFitが相性が良い。

ギター,ベース,ドラムの練習にも流用できるスグレモノだ。

 

副将:GRADO SR325e

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ロック・メタルと相性の良いヘッドホンとして,SENNHEISER HD25 と肩を並べるのが,米のガレージメーカー,GRADOのSR325e 。

GRADOのヘッドフォンはほぼ全ての機種がロック・メタルとの相性が抜群だが,特にSR325eは価格と音質のバランスが優れており,ロックンローラーメタラーに熱烈な支持を得ているヘッドフォンである。

刺激的な高音,ウォームで叙情的な中音,キレ味抜群の低音に,ヘッドフォンとは思えないほどの開放感と,唯一無二個性を放つモデルだが,これがロックやメタルを聞くためだけに生まれてきたかのような抜群の相性を示してくれる。

シャーンと頭をつん裂くようなシンバル,まるで泣いているかのようなメロディアスなコードと,ジャキジャキ歯ぎしりしているかのようなリアルなリフのギターはこのヘッドフォンでしか味わえない。これぞコアなファンを抱えるGRADOサウンドか。

HD25のような質実剛健で地味なサウンドとは異なり,とにかく爽快で有頂天なサウンドはアドレナリンの大量分泌間違いなしだ。とにかく重く激しく爽快なメタルでエクスタシーを感じてほしい。

作りの悪さ,拷問器具並みの装着感の悪さ(とはいえ私は快適に装着できましたが)を考慮してもなお余りあるほどの購入動機がこのヘッドフォンにはあるのだ。

ともかく,ロック・メタル向けのヘッドフォンを語る上で欠かせないのが,このGRADO SR325eだ。

 

大将:Vision Ears VE6 X1

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ドイツの新興カスタムIEMメーカー,Vision Ears のフラッグシップ機VE6のX1モデル。

Vision Ears のフラッグシップ機は,低音の量感重視のX1,中高域寄りで解像度・見通しの良さ重視のX2,その2つをスイッチ1つで切り替えられるXcontrolの3モデルが存在する。価格はX1とX2が20万円弱,Xcontrolが25万円程度と非常に高価だ。

Vision Ears のIEMに共通する特徴だが,無駄な贅肉をこれでもかというほど削ぎ落としたかのようなソリッドなサウンド傾向で,その具合はHD25の並みでない。それでいて耳に刺さらないように上手く音のカドを削っているような配慮が感じられる。

カスタムなので装着感はもちろんのこと,解像度,分離感,音場の広さ・表現,帯域バランスなど,どれを取っても一切の不満を感じさせない。ソリッドでシャープでスッキリとしていながらも,迫力満点で元気なサウンド傾向はGRADOのヘッドフォンにも通ずるところがあるが,音質のグレードはこちらの方が何段階も格上だ。

BA多ドラ特有の曇りやシャリシャリ感,音圧不足も一切感じられず,まさに完璧なサウンド。全カスタムIEM中でもここまでの完成度を誇るIEMはそうそうない。

お金に余裕のある人に是非とも手に入れて欲しい新生の名機である。

 

以上計5機種の紹介をしましたが,ここにあげたヘッドフォン,イヤホンはどれもロックンローラーメタラーに十分満足できるであろう名機ばかりです。今までヘッドフォンやイヤホンに拘ったことがない人,気にしていなかった人も,特にロックやメタルが本当に好きならば,是非1度店頭で視聴して頂きたいなと思います。

何か質問,疑問点,記事に対する要望やリクエストが御座いましたら,コメントやTwitterでして頂ければ幸いです。 

 

 

 

 

 

【特集】アニソン×ポータブルオーディオ

Features about music

今回は近年ブームの「アニソン」を「ポータブルオーディオ」で如何に高音質で聴くか,という特集記事になります。

(こういったピンポイントな読者層をターゲットに詳しく解説した記事はアクセス回数が伸びやすく,書きごたえがあります。)

 

イヤホンの購入

まずは今使っているイヤホンをグレードアップしましょう。

スマホウォークマン付属のイヤホンでは音数の多いアニソンを緻密に再生することができません。

では,アニソンにマッチする音色のイヤホンをいくつか紹介しましょう。

(なお,画像はe-earphone様,Amazonのホームページから拝借させて頂きました。)

 

【Under5000】

Auglamour R8

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発売開始から話題沸騰の超ハイコスパモデル。

弱カマボコ型の帯域バランスが女性ボーカルを引き立て,広大な音場がしっかり音を分離して再生する。

 

【Around10000】

RHA MA750

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BA型ばりの繊細な音色がアニソンにマッチする。

強めの低音のノリとボーカルの透明感が魅力。

 

【Under20000】

SENNHEISER IE60

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女性ボーカルの再生に定評あるFinal Heaven Ⅳ と迷ったが,アニソン再生には解像度・分解能の高さが必要不可欠なのでこちらを。

キレがありながら聴き疲れしない絶妙なチューニングが良い。

 

【Mid-Range】

Ultimate Ears UE900s

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圧倒的な解像度・分離感はBA型ならでは。

弱カマボコ型でキレのある音色がアニソンと高相性。

独特な音が気に入ればDUNU DN-2000 候補。 

 

 

イヤーチップの交換

手軽なのに効果抜群な音質向上策,イヤーチップの交換。

低域が無駄に強まり,高域が篭るComplyは論外。

よりタイトに,よりブレずに鳴らすために,以下の2製品への交換を提案する。

(ハマるかハマらないかは事前に各自お調べください。)

 

final イヤホン用イヤーピース Eタイプ

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低域がタイトに骨太になり,フォーカスも高まる。

低域が強まるのに中高域が曇ったりしないのが優秀。

 

SpinFit

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final Eタイプの音をガッツリとすると,こちらはシャッキリした音。

低域,高域が若干強まり,元気で派手な音に変貌する。

 

 

再生機器の見直し

ポータブルオーディオのシステムには主に次の3種類が存在する。

スマホ

スマホDAC内臓ポータブルヘッドフォンアンプ

DAP

2番目のスマホDAC内臓ポータブルヘッドフォンアンプは嵩張るので除外。

スマホで再生する場合,DAPで再生する場合に分けて解説しよう。

 

スマホで再生する場合】

まずは再生ソフトの変更をしよう。

特にiTunesなんかは機能性は高い一方で,モヤモヤしたパッとしない音だからだ。

音数の多いアニソンには,輪郭がハッキリした音造りが魅力のradius Ne PLAYER がお勧めだ。イコライザーでアニソンを選択するとフィットするだろう。

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シャキシャキしすぎな音色で聴き疲れがする場合は,Onkyo HF Player(左画像)やKORG iAudioGate(右画像)を検討してみても良いだろう。

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HF Player は味付けの強い高級オーディオメーカー風の音,iAudioGate はプロ向けのニュートラルで無駄のない音が魅力だ。

 

DAPで再生する場合】

世の中には高級なDAPがゴマンとあるが,アニソンを再生するにはせいぜい数万円のDAPで十分だ。

人工的な音ではあるが,ユーザーも多いであろうWalkman,これが意外と好相性だ。

中高域寄りの繊細志向な音がアニソンにマッチする。

Walkman A20 series

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(↑綺麗な画像がなかったのでsonyのホームページから拝借しました。)

最新のハイレゾ対応低価格帯モデルが狙いどころ。

 

迫力のある音が好みの方は以下のモデルを勧める。

Cowon Plenue D

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中高域の透明感も文句なしの自然で元気なサウンドが特徴。

イコライザーで音のケミストリーを楽しめる。

 

 

音源の準備

ここまでは再生機器全般を詰めてきたわけだが,肝心の音源がショボくてはお話にならない。ここでは,如何にしてデータに忠実な音源を抽出するか,その極意と神髄を教授する。

音源を入手する方法は現在,次の2通りがある。(違法な方法を除く。)

・CDからリッピング

・音楽サイトで購入し,ダウンロード

 無論,聴きたい音楽のハイレゾ音源があれば理想だが,アニソンというジャンルでハイレゾ音源となると限られてくるし,一般的には前者の方法をとることになる。

ハイレゾ音源があれば問答無用でそちらを勧める。)

リッピングする際の光学式ドライブは何でも良い。

(強いて言うならばPioneerから発売されている共振を抑えるモデルが理想。)

問題はリッピングする際のソフト。

Walkmanを使っている方はMedia Go をそのまま使い続けてもらえれば良い。

そうでない方は以下にお勧めのリッピングソフトを掲載したので,参考にされたし。

 

Windows編】

dBpoweramp

有料になるが永久に使えると考えれば安いハズ。

リッピングだけでなくタグの管理まで出来るスグレモノ。

(参考:http://audio-no-susume.com/pc-audio/cd_hi-res/

 

Mac編】

XLossless Decorder

Macユーザーにはお馴染み通称XLD。

こちらは無料なのがお財布に優しい。(その分メタデータの収集など,少々いい加減なところがある。)

1枚当たり約5分掛けてじっくりリッピングする。

(参考:http://gateway254.com/digital01/?p=1895

 

あとは音源をスマホDAPに入れて,高級イヤホンをプラグに刺して,アニソンの世界に没入するだけである。

 

こうした記事に人気が出るかどうかはまだ不明だが,好評だった場合は続編を作るかもしれないので,何かあればコメントお願いします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最近良く聴く音楽について

雑記

今回は最近良く聴く音楽について,色々紹介していきたいと思います。

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SENNHEISER HD650 のレビュー 前編

Headphone Review

その音に,桃源郷あり。

1年くらい前に購入した機種ですが,噂に違わぬ癒しのサウンドが大変魅力的で,みなさんにも是非購入してほしい素晴らしい名機だと感じたため,レビューしたいと思います。

ここ最近,価格.comやオーディオ系の掲示板で「価格の割に解像度が低く,音がモヤモヤしている」「得意不得意の差が激しく,現代音楽に適さない」などと酷評されているのを見掛けますが,このヘッドホンの奏でる”癒し”の音を前にしては,これらの指摘も霞んでしまいます。

実際,これらの指摘の一切は大変共感できますし,他のイヤホンに浮気してしまうことも多いですが,それでもなおHD650に回帰してしまう自分がいます。

これこそがHD650が時代を超えた名機であることの証明ではないでしょうか。

 

 

ドイツメーカー,SENNHEISERについて

世界的に有名なドイツのオーディオメーカーSENNHEISER(以下、禅)。

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(↑オーディオに縁の無い人でも1度は見たことがあるであろうロゴ)

beyerdynamic(以下,ベイヤー)やULTRASONE(以下、ゾネ)を加えてドイツ御三家などと呼ばれますが,ベイヤーは世界初のダイナミック型ヘッドホンを開発,禅は世界初の開放型ヘッドホンを開発したメーカー,そしてゾネは世界999台限定生産のEdition7(最近復刻版Tribute7が話題になりましたね。)を発売し,超高級ヘッドホン発売の流れを作ったメーカーとして,それぞれコアなファンを抱える有名オーディオメーカーです。

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(↑世界初の開放型ヘッドホン,SENNHEISER HD414)

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(↑左:ベイヤーのT1,右:ゾネのEdition7)

ドイツのお隣オーストリアのAKGとは,開放型ヘッドホンで知られる人気メーカーとしてライバル関係にあります。(個人的には,極めて繊細かつ刺激的な高音を再生するAKGのヘッドホンよりも,優しく芳醇な低域に包んでくれる禅のヘッドホンの方が好みです。)

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(↑高級ヘッドホンブームの火付け役,澪ホンことAKG K701。)

さて,本題に戻りましょう。

SENNHEISERと言えば開放型ヘッドホンHD800(以下、宇宙),密閉型ヘッドホンHD25でも有名です。

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HD800(左画像)はヘッドホンの常識を覆す,スピーカー並みの超広大な音場で有名で,クラシック鑑賞用ヘッドホンとしては鉄板と言うべき機種です。同価格帯には,AKGのK812やベイヤーのT1などが軒を連ねていますが,個人的にHD800はこれらの機種と比較して音質の次元が違う印象を受けます。

HD25(右画像)は放送業界などでもユーザー数が多い,シリーズで25年もの歴史のあるDJホンです。拷問器具と称されるほどの装着感で悪名も高いですが,ロックやメタルといったジャンルの音楽に対しては圧倒的なほどの相性の良さを見せてくれます。(ちなみに,開放型ヘッドホンで知られる,アメリカンメーカーGRADOのヘッドホンもロックンローラーメタラーからの圧倒的支持を得ています。)

他に,MOMENTUMシリーズやORPHEUS後継機HE-1など有名なヘッドホンはありますが,これらに関しては割愛させて頂きます。

また,イヤホンでいうとie800,ie80,ie60の3機種は各種オーディオ誌での評価も高く,ヘッドホンとはまた違ったゼンハイザーサウンドを堪能できます。

が,記事のテーマはゼンハイザーの機種紹介ではないので,ヘッドホンの紹介だけに留めておきましょう。

 

SENNHEISER HD650 について

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読者の皆さんもお疲れかと思いますが,HD650というヘッドホンを語る上で欠かせない知識がまだ残っているので,しばしお付き合い頂けたらと思います。

SENNHEISER HD650 のルーツを遡ると,約四半世紀前に発売されたヘッドホン,HD580 Precision に辿り着きます。

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 当時,ダイナミック型ヘッドホン最高峰との呼び声も高く,以降HD650まで続くフラッグシップシリーズ(具体的にはHD580 Precision を祖として,HD580 Jubilee,HD600 Avantgarde,HD650に至るまで)の原型となったモデルです。

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(↑左からHD600 Avantgarde,HD580 Precision,HD650,HD598となりますが,こうして並べると時代のロマンを感じます。)

歴史的名機HD650の原型が既に四半世紀前に完成していた事実には大変驚きますが,「さすがゼンハイザー」といったところでしょうか。

発売されて数年の間は,HD650と相性の良いFostexのHP-A3との組み合わせが価格.com2chなどで流行し,この組み合わせはクラシックやジャズを聴く人にとっての鉄板的存在となりました。(価格的に手頃であったのも大きいように思えます。)

ところが,2009年にこれまでの常識を覆す超高級ヘッドホン,HD800(↓画像)が発売され,HD650は惜しくもフラッグシップの座を奪われてしまうことになりました。

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とはいえ,HD800の音を「ヘッドホンの音を超えた」などと評価する者も多い一方,「人工的な音で愛着が湧かない」などと評価する声も根強く,そういった人たちの間では引き続きHD650を愛でる流れが広がっているのも事実です。(HD800が買う金がないがゆえの負け惜しみと受け取ってもらっても構いません。)

僕としては,「自分の家に帰るとホッと肩の力が抜けるのと同様,その音を聴くことでリラックスできる」ヘッドホンを求めているので,解像度では圧倒的に劣るもののHD650に愛着を覚えます。

 

デザイン

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HD650の外観について,まず言われるのが「ダサい」「地味」といった否定的意見でしょう。肯定的に言っても「ドイツの工業製品らしい無骨なヘッドホン」としか言いようがないと思います。

実際,プロユースのモニターヘッドフォンとして開発された(とはいえ,HD650の音をモニター調というのにも無理がありますが。)モデルであるため,地味なのは当然というか,むしろ余計なところにお金を掛けない潔さすら感じます。

僕はヘッドホンに関しては,あまり見た目を気にしない領分なので,この辺に関しての不満はありません。

 

装着感

結論から言うと,上の下程度の装着感の良さです。

さすがにHD800やHD700,AKGのK812といった最新のフラッグシップモデルの装着感の良さには敵いませんが,beyerdynamic T1 などとは良い勝負だと思います。

大柄なイヤーパッドは高級なベロア素材を使用しており,ホコリが付きやすく,暑苦しいのが玉に瑕ですが,快適な装着感に貢献しています。

側圧は強めの部類に入ると思いますが,使っているうちに徐々に緩くなっていきますから問題ありません。(それでもキツさに耐えられない人はティッシュ箱を挟んでおけば良いと思います。)

上部のベルト部分には中央で分かれた2つのスポンジがセットされており,AKG K701やQ701のように頭皮が痛くなるといった現象は起こり得ません。

 

 

さて,記事が長くなってしまったので,前後編に分けて,後編は後日公開したいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

final Heaven Ⅳ のレビュー

Headphone Review

final Heaven Ⅳ を購入したのでレビューしたいと思います。 

経緯

僕は普段ホームユースでSennheiser HD650 ,ポタでShure SE215 Special Edition を使っており(後者については紛失してしまいました。),前者は2003年発売から多くのオーディオファンの心を掴んできた開放型の定番で,濃密でウォームな低域再生に定評があり,一方で後者は某有名オーディオショップの売上ランキング上位の常連で,厚みのある低音が特徴の高コスパIEMとして、両機ともご存知の方も多いと思います。

最近になってから女性ボーカル(EGOIST,Aimer,anNinaなど)の楽曲を良く聴くようになり,紹介した両機の中域再生に不満を抱くようになり,数回の視聴を経て女性ボーカルの再生に定評のあるfinalのHeaven Ⅳ を購入するに至りましたので紹介する所存です。

 

final Heaven Series について

finalのHeavenシリーズは全機種がシングルBAという他者のイヤホンにない唯一無二の特徴を持っており,その自然な音楽再生に定評があり,個人的には「嵌まってしまった人は他に替えがないイヤホン」というイメージが強いですが,僕自身も音楽鑑賞を重ねるにつれ嵌まってしまい,他社のイヤホンを買う気になれなくなってしまった一人です。

値段の安い順にHeaven Ⅱ,Ⅳ,Ⅴ,Ⅴ aging,Ⅵ,Ⅶ,Ⅷと7機種展開されているHeavenシリーズですが,それぞれのサウンドからはしっかりとした個性を感じられ,音質諸々以前に音色に確かな違いがあります。

各機種の音色の違いは簡単に言うと「上位機種ほどより濃厚に,より立体的な音」といった具合で,解像度や定位感も上位機種ほど優秀です。

とはいえ必ずしも上位機種ほど全てのユーザーが良い音だと感じるわけではなく,例えば「Ⅵの濃厚な音よりもⅣのスッキリした音の方が好み」なんて人もいますし,Heavenシリーズが欲しい方はなるべく全機種を比較試聴した上で判断して頂きたいと思います。

 

Heaven Ⅳ

通常BAの音というと神経質で自然な音楽再生からは程遠いという偏見を持っている私ですが,Heaven Ⅳ のサウンドからはDDに似た自然で迫力ある音色を感じられました。(最近の製品でいうとCampfire Audio Orion もBAなのにDDの音がするとの呼び声が高く,女性ボーカルの再生に適しているあたりも似ていますね。)

筐体内の空気の流れを最適化するBAM(Balancing Air Movement)機構によって,DDのような迫力ある低音再生を可能としているらしく,その触れ込みに削ぐあわないどっしりとした低音を聴かせてくれます。

公式スペックは112dB/16Ωと非常に鳴らしやすく,スマホWalkmanなどのDAPへの直差しが想定された感度/インピーダンスであることを窺わせます。同じく高感度・低インピーダンスであるShure SE215 Special Edition と比較しても音量を取りやすく,僕のiPhone 5s では音量4で十分な音量を取れています。ポータブルアンプを常用する僕からするともう少し低感度・高インピーダンスの方がノイズ耐性が上がって嬉しいのですが,十分許容範囲でしょう。

 

デザイン

アルミ削り出しの細長いハウジング,きしめんと揶揄されることんもある平型ケーブルが目を惹くデザインです。やはり上位機種と比較すると質感で劣りますが,それでも同価格帯のSennheiser ie60 ,Onkyo E700m などと比較すれば十分高級感あふれる筐体で,女性にもマッチするデザインです。ただ,使用感に支障をきたすデザインであることも否定はできません。具体的には細長いハウンジングが人によっては装着疲れを引き起こし,平型ケーブルが酷いタッチノイズを生みます。(この平型ケーブルはタッチノイズを減らす構造となってるようですが,一体このケーブルのどこがタッチノイズが少ないのか理解に苦しみます。)

付属するケースは化粧箱風で高級感がありますが,表面がアルミ製のため非常に傷つきやすく,指紋も付きやすいため,実用性に著しく欠けると言わざるを得ません。自宅保存用にとっておいて,これとは別に外出用のケースを用意した方が無難です。

 

使用感

さすがにShure SE Series やWestone UM Pro/W Series ほどではありませんが,装着感は概ね良好です。ただし,奥まで押し込んで装着する設計になっているため,違和感や長時間の使用による装着疲れは起きるかもしれません。(僕が使う限りだと特に違和感や装着疲れは感じませんでした。)

3種類×4サイズのイヤーチップが付属されており,この中からユーザーは用途と装着感を考慮して選択することになります。標準装備のAタイプ,共振を抑えたBタイプ,装着感を向上させ低音を増強するEタイプの3種類があり,それぞれを装着した場合の音の違いについては「音質」の項で具体的に述べますが,僕の場合はホームユースでBタイプ,ポタ環境ではEタイプを使用しています。

耳にしっかりとフィットするため,敢えてComplyのイヤーチップや,茶楽音人のSpinFit,MonsterのSuper Tips を利用する必要性を感じません。(他社のイヤーチップと比較しての話であり,自らの好みにあったサードパーティ製のイヤーチップを流用するのも一つの手だと思います。)それだけユーザーの装着感に配慮した設計だと言えますし,付属するイヤーチップが自社開発である点からもfinal社の情熱とこだわりが感じられます。

 遮音性はEタイプを装着した場合十分に確保されますし,目立った音漏れもありません。

一方,タッチノイズの大きさは非常に気になります。タッチノイズの一番の解決法がShure掛けであることは有名な話ですが,ハウジングやケーブルの形状により,Shure掛けがかなりしにくいのが現状です。(左右逆掛けも試しましたが定位感などで不満を感じたためやめました。)自宅やカフェなどでじっくりと音楽を聴くのに向いたイヤホンと言えますが,どうしても外で聴きたいといった場合にはクリップなどで対策しましょう。

 

音質

一聴して感じられたのが「極めて生々しい中域」です。

まさにボーカリストの口元が目に浮かび,吐息や喉の渇きなども感じられるようなサウンドです。原音に忠実というよりも,エコーやリヴァーブを掛けて生々しさや透明感を強調したようなサウンドです。女性ボーカルの再生に定評のあるイヤホンですが,僕は女性ボーカルよりもハイトーンな男性ボーカルの方が得意な印象を受けました。また,同じ女性ボーカルの中でも相性の良し悪しがあり,具体的にはしっとりゆったり歌い上げるボーカルとの相性が良い一方で,爽快に元気一杯に歌い上げるボーカルとの相性はそれに劣るといった感じです。(加えて,あまり高すぎる声は合わないような気もします。)とはいえ,他のイヤホンと比較した場合,いかなる女性ボーカリストの声も相性が良いと言えるでしょう。

また,空間表現の秀逸さはさすがHeavenシリーズといったところです。(HD650のようなスモーキーな音色ではなく,濃厚さと透明感のバランスが上手い具合に取られている印象です。)

これによって,アコースティックギターやピアノ,ストリングスなどのバックサウンドもキッチリボーカルと分離して非常に生々しく聴こえます。一方,エレキギターや電子音などの非アコースティック楽器の音は相性が悪く,ボーカルに掛かったエコーでさえも違和感を覚えるほどです。そもそもHeavenシリーズに分離感や解像度を求めてはいけないのかもしれませんが,音数の多い楽曲は音が混ざってしまい破綻しているような気さえします。ですから,小編成のクラシックやバラード系のボーカル曲を聴くのには適していますが,大編成のクラシックや近年流行りのEDMとの相性は悪いでしょう。

中域に加え,高域の金管楽器やライドシンバルなども生々しさが際立ちます。ハウジングの形状もあり,かなり音の余韻を実感できます。が,超高域(ハイハットシンバルなど)はほとんど聴こえず,よく耳をすまさないと気づかないほどです。

中域,高域が好印象な一方で量・質ともに残念なのが低域です。

この価格帯に求められる音が低域が強めのポップス、ロック向けのサウンドカラーなのかもしれませんが,艶やかな女性ボーカルを心ゆくまで堪能したいユーザーにとっては,多すぎる低音は邪魔でしかありません。もう少し中域にフォーカスを当てたチューニングをして欲しかったと思います。

比較的スローで音数の少ないロックではドラムの音が心地よく響きますが(バスドラの溜めやスネアの張り具合なども感じられ,前方にタカタカとドラムの音が繰り広げられ,アコギが入ったバラード系のロックなんかは相性が良いです。),アップテンポな楽曲になった瞬間不安定さを露わにし,ドラムが壊れているのではないかと思うような安っぽいペシャペシャバコバコした音に凶変します。音の締まりもあまり感じられずごちゃごちゃボワボワした印象です。そもそもBAについては本来低域の再生には向いておらず,DDと比較してその再現性において劣るのは致し方ないことなのかもしれませんが,もう少し余裕をもって鳴らして欲しかったと思います。

加え同価格帯のIE60などとに比べ解像度,分解能に不満が残ります。音を分解してキッチリと鳴らす現代イヤホンの常識に当てはまらない個性的な機種と言えるのかもしれませんが,近年のシャキシャキしたアニソンとの相性はあまり良くないため不満です。

また,音場は広いものの定位が感じられず,その音がどこで鳴っているのかがまるでわかりません。バンドをやっている身からすると音を正確に把握する用途には向かないように思えます。

次にイヤーチップ変更に伴う音質の変化について述べますが,標準装備のイヤーチップ(Aタイプ)を基準とすると,Bタイプは開放型のヘッドホンを思わせるような広大なサウンドステージが魅力のサウンドで,Eタイプは低域が強めに感じられるフォーカスのしっかりとしたまとまったサウンドが魅力的です。個人的にはBタイプのサウンドに音質的優位性を感じられましたが,ロックを聴きたいとき,外出時などは遮音性を重視してEタイプを選択しても良いかと思います。一方,敢えてAタイプを選択する必要性はないように思えました。

 

ここまでかなり辛口でレビューしてきましたが,HeavenⅣの音色は全ての不満を押し殺してでも聴きたい魅力的なサウンドです。ゆったりしっとりとした女性ボーカルの楽曲や,小編成のクラシックなどがお好きな方に是非お勧めしたいモデルです。