The Diamond Dust

僕は蜃気楼を見ていた…

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by Unknowner

SENNHEISER HD650 のレビュー 前編

その音に,桃源郷あり。

1年くらい前に購入した機種ですが,噂に違わぬ癒しのサウンドが大変魅力的で,みなさんにも是非購入してほしい素晴らしい名機だと感じたため,レビューしたいと思います。

ここ最近,価格.comやオーディオ系の掲示板で「価格の割に解像度が低く,音がモヤモヤしている」「得意不得意の差が激しく,現代音楽に適さない」などと酷評されているのを見掛けますが,このヘッドホンの奏でる”癒し”の音を前にしては,これらの指摘も霞んでしまいます。

実際,これらの指摘の一切は大変共感できますし,他のイヤホンに浮気してしまうことも多いですが,それでもなおHD650に回帰してしまう自分がいます。

これこそがHD650が時代を超えた名機であることの証明ではないでしょうか。

 

 

ドイツメーカー,SENNHEISERについて

世界的に有名なドイツのオーディオメーカーSENNHEISER(以下、禅)。

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(↑オーディオに縁の無い人でも1度は見たことがあるであろうロゴ)

beyerdynamic(以下,ベイヤー)やULTRASONE(以下、ゾネ)を加えてドイツ御三家などと呼ばれますが,ベイヤーは世界初のダイナミック型ヘッドホンを開発,禅は世界初の開放型ヘッドホンを開発したメーカー,そしてゾネは世界999台限定生産のEdition7(最近復刻版Tribute7が話題になりましたね。)を発売し,超高級ヘッドホン発売の流れを作ったメーカーとして,それぞれコアなファンを抱える有名オーディオメーカーです。

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(↑世界初の開放型ヘッドホン,SENNHEISER HD414)

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(↑左:ベイヤーのT1,右:ゾネのEdition7)

ドイツのお隣オーストリアのAKGとは,開放型ヘッドホンで知られる人気メーカーとしてライバル関係にあります。(個人的には,極めて繊細かつ刺激的な高音を再生するAKGのヘッドホンよりも,優しく芳醇な低域に包んでくれる禅のヘッドホンの方が好みです。)

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(↑高級ヘッドホンブームの火付け役,澪ホンことAKG K701。)

さて,本題に戻りましょう。

SENNHEISERと言えば開放型ヘッドホンHD800(以下、宇宙),密閉型ヘッドホンHD25でも有名です。

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HD800(左画像)はヘッドホンの常識を覆す,スピーカー並みの超広大な音場で有名で,クラシック鑑賞用ヘッドホンとしては鉄板と言うべき機種です。同価格帯には,AKGのK812やベイヤーのT1などが軒を連ねていますが,個人的にHD800はこれらの機種と比較して音質の次元が違う印象を受けます。

HD25(右画像)は放送業界などでもユーザー数が多い,シリーズで25年もの歴史のあるDJホンです。拷問器具と称されるほどの装着感で悪名も高いですが,ロックやメタルといったジャンルの音楽に対しては圧倒的なほどの相性の良さを見せてくれます。(ちなみに,開放型ヘッドホンで知られる,アメリカンメーカーGRADOのヘッドホンもロックンローラーメタラーからの圧倒的支持を得ています。)

他に,MOMENTUMシリーズやORPHEUS後継機HE-1など有名なヘッドホンはありますが,これらに関しては割愛させて頂きます。

また,イヤホンでいうとie800,ie80,ie60の3機種は各種オーディオ誌での評価も高く,ヘッドホンとはまた違ったゼンハイザーサウンドを堪能できます。

が,記事のテーマはゼンハイザーの機種紹介ではないので,ヘッドホンの紹介だけに留めておきましょう。

 

SENNHEISER HD650 について

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読者の皆さんもお疲れかと思いますが,HD650というヘッドホンを語る上で欠かせない知識がまだ残っているので,しばしお付き合い頂けたらと思います。

SENNHEISER HD650 のルーツを遡ると,約四半世紀前に発売されたヘッドホン,HD580 Precision に辿り着きます。

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 当時,ダイナミック型ヘッドホン最高峰との呼び声も高く,以降HD650まで続くフラッグシップシリーズ(具体的にはHD580 Precision を祖として,HD580 Jubilee,HD600 Avantgarde,HD650に至るまで)の原型となったモデルです。

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(↑左からHD600 Avantgarde,HD580 Precision,HD650,HD598となりますが,こうして並べると時代のロマンを感じます。)

歴史的名機HD650の原型が既に四半世紀前に完成していた事実には大変驚きますが,「さすがゼンハイザー」といったところでしょうか。

発売されて数年の間は,HD650と相性の良いFostexのHP-A3との組み合わせが価格.com2chなどで流行し,この組み合わせはクラシックやジャズを聴く人にとっての鉄板的存在となりました。(価格的に手頃であったのも大きいように思えます。)

ところが,2009年にこれまでの常識を覆す超高級ヘッドホン,HD800(↓画像)が発売され,HD650は惜しくもフラッグシップの座を奪われてしまうことになりました。

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とはいえ,HD800の音を「ヘッドホンの音を超えた」などと評価する者も多い一方,「人工的な音で愛着が湧かない」などと評価する声も根強く,そういった人たちの間では引き続きHD650を愛でる流れが広がっているのも事実です。(HD800が買う金がないがゆえの負け惜しみと受け取ってもらっても構いません。)

僕としては,「自分の家に帰るとホッと肩の力が抜けるのと同様,その音を聴くことでリラックスできる」ヘッドホンを求めているので,解像度では圧倒的に劣るもののHD650に愛着を覚えます。

 

デザイン

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HD650の外観について,まず言われるのが「ダサい」「地味」といった否定的意見でしょう。肯定的に言っても「ドイツの工業製品らしい無骨なヘッドホン」としか言いようがないと思います。

実際,プロユースのモニターヘッドフォンとして開発された(とはいえ,HD650の音をモニター調というのにも無理がありますが。)モデルであるため,地味なのは当然というか,むしろ余計なところにお金を掛けない潔さすら感じます。

僕はヘッドホンに関しては,あまり見た目を気にしない領分なので,この辺に関しての不満はありません。

 

装着感

結論から言うと,上の下程度の装着感の良さです。

さすがにHD800やHD700,AKGのK812といった最新のフラッグシップモデルの装着感の良さには敵いませんが,beyerdynamic T1 などとは良い勝負だと思います。

大柄なイヤーパッドは高級なベロア素材を使用しており,ホコリが付きやすく,暑苦しいのが玉に瑕ですが,快適な装着感に貢献しています。

側圧は強めの部類に入ると思いますが,使っているうちに徐々に緩くなっていきますから問題ありません。(それでもキツさに耐えられない人はティッシュ箱を挟んでおけば良いと思います。)

上部のベルト部分には中央で分かれた2つのスポンジがセットされており,AKG K701やQ701のように頭皮が痛くなるといった現象は起こり得ません。

 

 

さて,記事が長くなってしまったので,前後編に分けて,後編は後日公開したいと思います。